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2010.10.02

NO.48 ステークホルダーについて

監査役A:昨日10月1日(金)に日本コーポレート・ガバナンス・フォーラム主催の第45回勉強会に出かけてきました。

監査役B:テーマは何でした?

監査役A:「利害関係者志向の経営-もう一つのCSR」という案内でしたが、実際の内容は、最新の利害関係者論の紹介でした。

監査役B:講師は?

監査役A:埼玉大学経済学部准教授の水村典弘先生でした。案内のパンフには次のように紹介されていました。 
「我が国における利害関係者研究の第一人者で、『利害関係者志向の経営』の訳者の一人でもある水村典弘氏(埼玉大学経済学部准教授)をお招きし、最先端の研究成果についてお話をうかがいます。」

監査役B:米国の研究者エドワード・フリーマンらが著した論文『利害関係者志向の経営―存続・世評・成功』の訳者なのですね。

監査役A:そうなのです。ですからエドワード・フリーマン氏の理論も織り込まれた発表でした。それだけに難解でしたが・・・。

監査役B:水村先生は、実務経験なしに学究畑ですからね・・・。
ステークホルダーをどう捉えておられましたか?

監査役A:ステークホルダーと一口に言っても、企業によって差があり、企業内でも立場によっても違いがある。勿論、時代によっても変わってくる、とのこと。企業も多角化で事業内容が変わってくる。また、ホールディングカンパニーなどの登場で、組織や位置づけも変わってくる。取締役から従業員までそれぞれにステークホルダーも変わってくる、ということなのです。

監査役B:確かに、今まで「企業」と丸めて言っていましたが、具体的に考えていくと、そのように細分化していくことになりますね。しかし、どこまでの範囲かと言うことなど区切りはないのでしょうか?

監査役A:ステークホルダーの定義としては「(企業に対して)権利を持っている人。権利を行使する人。」と説明がありました。

監査役B:権利の行使と言えば、クレーマーなども入るのですか?

監査役A:セミナーでは、米国の三菱商事の入っているビルの前でNGOが鯨を守れ!とデモをしている映像を流しての話がありました。

監査役B:それはどう関係があるのですか?

監査役A:三菱商事はメキシコ政府と共同出資で塩田と製塩工場施設をつくる計画があったが、そこが「クジラ保護区」であったことから環境破壊だとNGOが干潟の保護と鯨の保護を訴え、製塩開発は中止になった、という話です。このあたりは塩作りに適した条件が揃っており、ここで生産される工業用塩は年間約700万トン。その約半分は日本へ輸出されているのです。

監査役B:環境問題で事業計画が中止ですか、それも政府が噛んでいたのに。
NGOも無視できませんね。

監査役A:講師も言っていましたが、米国には2年間アフリカや南米などに行って現地で英語や様々な技術を指導するピースコープ(平和部隊)という政府主導の海外ボランティアプログラムがあります。現地での衣食住は保障されていますがお手当は1カ月に500ドルくらいのお小遣いが支給される程度です。そのピースコープが2007年の大学新卒者の人気就職先リストの第5位に入ったのです。また、2007年人気就職先の第10位に入ったティーチ・フォー・アメリカ(TFA)があります。TFAはエリート大学の成績優秀者が卒業後の2年間、貧困地区にある公立の学力底辺小中校で教師になるというプログラムです。年収は2万5000ドル(約280万円)です。多くのエリート達がめざすJPモルガンの初任給は6万5000ドル(約730万円)ですが、そのJPモルガンを蹴ってまでTFAを選ぶ学生が増えてきたのです。そこでJPモルガン側の提案によりTFAとの共同採用が始まったのです。マイクロソフトやアクセンチュアなども右に倣えだそうです。
 このように企業の方も「金儲け」が目標の人より「社会貢献」の意志と能力を持つ候補者を優先し始めたようです。

監査役B:そんな風向きの変化があるのですね。アメリカでは・・・。そのようなことでは、NGOもステークホルダーとして無視できませんね。

監査役A:日本でも総会屋やクレーマーがいますので、それにどう対応するかが問題になっています。

監査役B:どうするのですか?

監査役A:実例ですが、ある大学で学生が「○○教授は特定の学生に贔屓をしているから自分の成績が悪くなった」と学校当局にクレームを持ち込んだそうです。これをいい加減にしておくと、インターネットに書き込まれ、大騒ぎになる可能性がある。すると応募者が減って、学校経営にも支障を来すおそれがある、というのです。
 この場合の対応ですが、1.学生本人と話をする。2.周囲から事実を集める。3.教授からも話を聞く。などのステップを経て、最終的には「第三者が見て、どう判断するか」を判断基準に対応する、との実例が紹介されました。

監査役B:それが「ステークホルダー・マネージメント」ですね。ステークホルダーには、色眼鏡で見ないことが大切ということですね。

監査役A:企業が一番恐れているのは「不買運動」です。
例えば、シェル石油がナイジェリアで環境破壊や人権侵害を犯していることが明らかになった時、環境・人権団体の人々が「シェルをボイコットしよう!」とデモをしました。その他にも多くの事例があります。不買運動にならないように何としても手を打たねばならないのです。

監査役B:中には暴力的なNGOもありますが?

監査役A:権利の行使であっても不当な手段での権利行使は認めないのです。
総会屋は違法な行為ですから「NO」を突きつけるべきです、とのことでした。

監査役B:ステークホルダーの話で必ずと言って良いほど出てくるのが、ジョンソン・エンド・ジョンソンのコア・ バリューである「我が信条(Our Credo)」ですが・・・。

監査役A:J&Jの評価については、「グローバル・スタンダード・リーダーシップ」の内容について客観的に測定できる指標があること,数値化方法が確立しているので実行段階上手くいっている、とのコメントでした。
 その他、マルコム・ボルドリッジ賞(米国国家経営品質賞)を1992年と1999年の二度も受賞したリッツカールトンホテルの「クレド」の評価が数値化されていることを講師は高く評価していましたね。

監査役B:業績以外のことについてもきっちり評価する企業を評価すべきと言うことですね。

監査役A:以上がセミナーの概要です。最後にモデレーターの出見世 信之氏(フォーラム運営委員)がまとめを次のように言っておられました。
・株主もステークホルダーである。
・ステークホルダーはケースバイケースだが、マッピングをすると全員になる。
・企業対ステークホルダーという図式は単純である。
・トレードオフ思考に陥らないこと。
・双方の利益をどう満足させるか、を熟考すること。

監査役B:今までと違った観点がいくつかありましたね。ありがとうございました。■

- 監査役と内部監査担当は監査を通じて、会社と社会に貢献できる-

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