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2010.11.17

NO.51 ISO26000 その1

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<通番NO.345 >━━━━


取締役A:15日の日本コーポレート・ガバナンス・フォーラムの第46回勉強会<ISO26000>は良かったですね。

取締役B:私はISO26000について断片的に情報を得ていましたが、今日のように体系的、かつ直接関わった方の話が聞けましたので腹に落ちました。

取締役A:講師の関正雄氏は、損害保険ジャパン理事(CSR統括部長)という肩書きですが、実は日本経団連から依頼されてISO26000(社会的責任)規格づくりの日本産業界代表エキスパートとして国際標準化機構(ISO)で5年も実務作業に携わっておられた方なのですね。コンサルタントなどの受け売りの話とは異なり重みがありましたね。

取締役B:さて、本論に入る前に少し長い前置きがありましたね。
地球環境が如何に悪化しているか。その事例として「1970年以降でC02は80%増加。20世紀の100年間で世界の平均海面水位は17センチ上昇。1970年以降、生物種は30%減少。異常気象のために中国では2億人が洪水被害があり、パキスタン・インドの洪水、ロシアの猛暑と干ばつ、ボリビア・アルゼンチンの大寒波、日本では70%の水田で害虫増加、殺虫剤の使用が増えた。」更に、人類の貧困についても詳しく説明されましたね。「12億人が1日を1ドル未満で暮らしている。2ドルに置き直すと20億人も居る。16億人が電気が使えない。8億人が飢餓状態にあるか、もしくは不安定な食料供給に依存。9億人が安全な水を使えない。毎年1800万人が衛生や安全な水の欠如で死亡。」との説明でした。参考図書:『貧困削減と人間の安全保障』JICA研究所(2005年)刊。

取締役A:環境と貧困については、我々の認識と大きくかけ離れているので強調されたのでしょう。講師は「人間にとっての脅威が増えており、リスクが増えている」という厳しい論調でしたね。我々の認識と大きくかけ離れているという点では次に話された「CSRた関する消曹者意識の比較」も留意すべきなのでしょう。

取締役B:そうですね。「CSRに関する意識調査」の内容は、各国の比較でしたが、先進国は「環境」に関心があり、途上国は「貧困」に関心が大きいという、ごく当たり前で自然な調査結果でした。それについて講師は「貧困と環境の同時解決が課題なのだ」と言うことと次のグラフでは「10年前に比べて企業は現在、社会及び環境に対して責任が重くなってきたか?」という質問に、中国が72%も重くなったと回答しています。中国は意識だけでなく「CSRレポート」の提出も昨年は400社もあり、一昨年の140社から大幅に増加している。これは中国政府が政策的にCSRを推進している証だと言える。」と中国の関心の高まりを強調され、「この様な事を背景として知って欲しい」と言うことでしたね。

取締役A:さて、いよいよ本論ですね。先ず「ISO26000をひと言でいうと」というタイトルで、次のように要約されました。
・持続可能な発展を実現するために、
・世界最大の国際標準化機関1SOによって、
・マルチステークホルダー・プロセスで開発された、
・(企業だけでなく大学や病院など)あらゆる種類の組織に向けた
・社会的責任に関する初の包括的・詳細な、
・ガイダンス文書である
これは社会的責任について網羅的に、体系的に最新、最大のモノである、と言葉を添えられました。
 *持続可能な発展とは「将来の世代の人々が自らのニーズを満たす能力をそ  
  こなうことなく、今日の世代のニーズを満たすような発展。

取締役B:この社会的責任国際規格(lSO26000)策定にあたっての考え方を
ISO元副会長(2006-2007)ジバ・パティール氏(イスラエル)の言葉を借りて説明されました。
「我々は皆・・・・持続可能で公正なよりよい社会に住みたいと願っている。でもそのために我々は個人として、組織として、社会として、何をしているだろうか?」
「ISOはグローバルな相互関連性を強める政策を展開してきたが、今日、社会的責任(Social Responsibility)よりもグローバルな関連性の強い分野はほとんどない」

取締役A:そこでの補足説明で、ISOは工学からスタートした。それを第一次世代とすると第二次世代はマネジメント規格。第三の規格が社会的責任であり、持続的発展の規格だと言うのも明快でしたね。

取締役B:「社会的責任国際規格(ISO26000)の概要」では、
「持続可能で公正・衡平な社会創造に向けて、環境保護・人権の尊重といった普遍的な社会的責任(SR:Social Responsibility)に関する行動基準を、世界のあらゆる組織に浸透させる。」と言うことでしたね。

取締役A:従来のISOと異なる点が重要ですね。
・要求事項を含まない「ガイダンス文書」であろこと。ISO14000などは第三者認証があったが、それらがないこと。
・次の6つの分野、カテゴリーの人が関わって作られた。政府、産業、労働、消費者、NGO、その他有識者(大学教授など)。

取締役B:ISO26000は「である」「ではない」という妙なタイトルでの話がありましたね。

取締役A:従来との違いを再確認されていましたね。即ち、「ではない」というのは、・第三者認証はなく、自己適合宣言の必要もない。・既存のガイドラインと取って代わるものではない。従来のものと合わせて使っていく。・企業のみに適用される規格ではない。
「である」というのは、・持続可能な発展への行動を促すものであり、組織に法令遵守を超えるものを奨励するもの、・現時点では社会的責任の世界のグッド・プラクティスを集大成したものである。従って、今後、良い事例が出てくれば、改訂が考えられる。と言うことでしたね。

取締役B:ISO26000の経緯(検討から発行まで)の話がありましたが、既に、2001年にCSR規格が必要ではないかという議論があったそうですね。従来の規格は3年がタイムリミットだが、これは5年~6年かかり、8回の会合が必要だったとのことですが、多くの人のコンセンサスが要りましたからね。講師の関さんは2005年の3月から参加しておられたようです。

取締役A:関さんが日本の産業界エキスパートとして参加されて次のような提案をされいますね。このことがISO26000の目指すものだと言う説明でした。
 「社会的責任の本質的な原則」(参考)
      -- ISO/SR日本産業界エキスパート案として提案 --
1.人間の尊厳と多様性の尊重
 人が人としてその生存を保障され、多様な価値を生み、それを享受する主体として尊重される社会。人種・皮膚の色・性別・言語・宗教・思想などの多様性が受容され、それを組織や社会の強みとしていく社会。
(この様な社会を作るためにどうすればよいのか)

2.持続可能性の追求
 将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たす。世代間の公平性が保たれ、社会的に公正で公平な資源配分が行われる

取締役B:概論はここまででしたね。まとめるとどうなりますか?

取締役A:現在、地球上に「貧困」と「環境」という喫緊の問題がある。それを解決していかないと持続可能な発展に結びつかないだろう。
 当初、CSRとして考えられていたが、この課題は企業だけではないからと
Cを無くした「SR」になり、検討チーム、即ち「公を担う主体」も多様化になり、マルチステークホールダーが参加し、政府、産業、労働、消費者、NGO、その他有識者(大学教授など)の6つの分野が参加して、普通は3年で終えるものだが、5年~6年間かけて発行された。このように多くの人が長時間関わって出来たものだから良い内容になっている。それでも内容は現時点でのベストプラクティスなので、3年ぐらいで改訂が考えられる。あくまでも理想的な社会の実現のための行動を促すもの、と言うことでしょうか。(続く)

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