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2011.03.09

NO.59 セミナー報告:取締役の責任について


監査役B:随分、ご無沙汰ですね。今年の期末監査は大変ですね。

監査役A:そうなんですよ。世間や株主の皆さんからコーポレート・ガバナンスの要求が多くなり、それに従って、監査役もすることが増えましたね。

監査役B:昔は「閑散役」と言われていた時代もあったようですが・・・。

監査役A:それは違うのです。そのように言われたのは、監査役の重責を知らないトップや監査役の場合に限ると言うことらしいですよ。最近でも、あるトップは「監査役さん、今までご苦労でした。ゆっくりして下さい」と言って、監査をさせなかったと言うことも聞きましたね。

監査役B:そうでしたか。

監査役A:最近は、それに経営環境がめまぐるしく変わるので、それに対応するのにも大変ですよ。

監査役B:監査役は部下に任せる、と言うことができませんからね。
ところで、最近のお勉強はいかがですか?

監査役A:日本コーポレート・ガバナンス・フォーラムの「第47回勉強会」です。
 講師は西村あさひ法律事務所の岩倉正和弁護士でした。岩倉弁護士は、M&Aがご専門でブルドッグソースに対する敵対的TOBの防衛、三菱UFJ証券とモルガン・スタンレー証券の統合、帝国ホテルと三井不動産の業務提携、第一生命保険の株式会社化、協和発酵グループとキリングループの戦略的提携と医薬品事業の経営統合などに関わってこたれました。

今回のテーマは、「法律の視点から見た企業経営」 -近時のコーポレート・ガバナンス論や取締役の行動準則を題材として-、でした。

1.取締役の責任・行動準則
   取締役は株主利益を最大化するような行動をすべきだと、従来から言われているが、取締役が契約しているのは会社であって、株主ではない。だから、株主には直接的な責任はない。会社を通じて間接的に責任を果たしていますが。
これについては、岩倉正和先生の「取締役の責任・行動準則-「株主利益最大化」による日本法における「信認義務」構成の試論的覚書-」と岩倉正和・石川智也共著「補論 取締役の責任・行動準則-わが国においてレブロン義務は認められるか-」をご覧戴きたいとのこと。この他の資料も日本コーポレート・ガバナンス・フォーラムのホームページで今なら閲覧できますよ。(可能な期間は2011.3.13迄です)

2.善管注意義務と信認義務

善管注意義務と忠実義務とは、同じものか異なるものか、との争いがあるのです。
それの判例が「八幡製鉄所政治献金事件」(最高裁判所大法廷判決昭和45年6月24日 民集24巻6号625頁/判時596号3頁)の中にあるのです。
最高裁での争点は以下の3点である。1.政治献金が会社の定款所定の目的(権利能力)の範囲内か。2.参政権との関連で憲法違反を構成するか。3.取締役の忠実義務に反するか。
 この最後の点について「忠実義務は善管注意義務を敷衍し、かつ一層明確にしたにとどまるのであって、それとは別個の高度な義務を規定したものではない。」
と出ているのです。これについても前述の資料を見て欲しいとのことでした。
この問題を考えるときのキーワード

1.日本会社法におけるFiduciary Dutyの位置づけ
 Fiduciary Dutyはアメリカの取締役の義務で、その内容は、株主に対して受託者としてFiduciary Dutyを負い、この義務のうち最も重要なものが、Duty of LoyaltyとDuty of Care。

2.レブロン義務
一度、自社株を売りに出したら、取締役会は最高値の買収者を売却先に選ぶ義務を負う。これは、1985年にデラウェア州最高裁が示した司法判断。逆に言えば、売りに出していないならば、取締役会は短期的に株主利益を損ねても、従業員や取引先などの利益も考慮して長期的な企業価値の創造を優先できる。
参考資料は、太田洋・矢野正紘著「対抗的買収提案を受けた対象会社取締役はいかに行動すべきか-わが国会社法とレブロン「義務」-」

3.FO条項
 FO条項(Fiduciary out条項)とは、被買収会社が契約上の義務から離脱することを認める条項のことで、その目的は、買収者との合意内容によってM&A取引を実行する際の義務と、被買収会社の取締役の会社および株主に対する忠実義務との衝突を回避ないし緩和することであるとされている。
参考資料:岩倉正和・大井悠紀著「M&A取引契約における被買収会社の株主の利益の保護-Fiduciary out 条項を中心に-」

4.立法論
平成20年7月24日の内閣府の規制改革会議の内容

5.経営判断原則

監査役B:いやー、奥深い問題ですね。株主総会前に勉強しないといけませんね。■


- 監査役と内部監査担当は監査を通じて、会社と社会に貢献できる-
     Web:http://tada.cocolog-nifty.com/kansayaku/

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